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京都iCAPが進めるEIR-iCAP(EIR:Entrepreneur in Residence、客員起業家)の第1期生として、2023年2月から京都iCAPに在籍していた間澤敦氏が、2024年4月にライノフラックス株式会社を設立した。同社は、京都大学大学院工学研究科の蘆田隆一講師が発明した新規発電技術を基礎に、「発電するほどCO₂排出を減らせる」発電装置の開発を行うエネルギースタートアップだ。 「船出ストーリー特別版」として、ライノフラックス株式会社 代表取締役CEO間澤敦氏と、京都iCAP 執行役員・投資第一部部長 八木信宏との対談を前編・後編の2連載でお送りする。
(前編はこちら)
後編では、会社の舵を取る難しさやディープテック・スタートアップゆえの最初の壁と展望、そして、間澤氏が描く20年後のライノフラックス社の姿など、会社設立直後のCEOの核心に迫ります。
起業されて半年経ちましたが、夢は当初から変わっていませんか。15年、20年後に自分の手がけたビジネスがどうなっているか、考えたりしますか?
ちょうど、先日もチームミーティングをしたのですが、結論としては、夢は変わっていません。2040年、そこでは、われわれのつくるプラントが世界中に設置されていて、分散型の発電とCO₂回収が行われているという明確なイメージがあります。そのイメージフォトも作成しました。それを目指すための具体的なプランも描いています。新しいスタッフが増えたときには、まず初日に、このイメージフォトを見せて、目指す世界に向けての共通の目標を持ってもらっています。
それは安心しました。20年後の未来をつくる、2040年の世の中を変えるという夢は変わっていないのですね。
はい、最初に八木さんとお会いしたときに、「20年後の未来をつくってください。それに向けて全力でサポートします」と言ってもらったのですが、本当にそうで、ターゲットである2040年にどうなれているかですね。上場だとかは、あくまでも通過点であり手段だというような話を仲間としています。
それはすばらしいですね。間澤さんがわれわれの仲間に入ってきてくれたときから、なにか、期待するものがありました。それは、理論とか、数字とかではなくて、魂を揺さぶられることをしてくれるのではないかという期待感でした。その期待通りにライノフラックスを率いておられることに感激しています。2040年になったら、また、間澤さんにEIRへ戻ってきてもらって、もう一回何かにチャレンジしてほしいです。(笑)
いまライノフラックスは15人近い組織になっていると思うのですが、この時点で感じられている組織上のハードルには、どんなものがありますか?
自分よりも優秀な方々を自分がどうマネージするのかということです。初期メンバーは自分よりも優秀な人しか採用しないという方針でやってきましたので、いま私が一番年下です。キャリア的にもすごいトッププレイヤーである彼らの心のどこかで、年下の私の下で働くことに対する心理的なハードルがあるのではないかと。一方で、私はリーダーとして指示を出す必要もあります。優秀なチームメンバーの自尊心と、組織としての在り方を両立するということは、人間の心の柔らかい部分と、ハードで理論的な部分の両方を意識しないといけないと思っています。これは、私の人生の中で初めて経験することです。いままでは、プレイヤーとして立ち回ってきたのですが、これからはCEOとして、マネジャーとして振る舞うということを、すごく学んでいます。
そういう苦労もあるのですね。まだ、起ち上げられたばかりですが、会社を潰せないというプレッシャーは大きいですか。
会社を潰すプレッシャーと言うよりも、一時期でもライノフラックスに所属していたという事実を、チームの方々にとっての傷にはしたくない思いが強いです。スタートアップなので、大きく燃やして、大きく失敗することは怖くないのです。それはチーム全員がそう思っていると思います。ただ、成功しても失敗しても、「大きな挑戦をしたよね」というようなトラックレコードを残せる潔い会社にしたいのです。
そうですね。思い切って挑戦をしてもらいたいと思いますし、会社を潰せない理由が、メンバーのことを考えてというのはすごくいいことだと思います。ファウンダーのテクノロジーは大事にしてほしいと思いますが、従業員にも気を配っているという点は安心だと思いました。
われわれのメンバーは30代40代が多く、自分も含めお子さんをお持ちの方もおられます。そういう方は、次の世代を見ている方が多いです。われわれの世代は、少しぐらい温暖化が進んでもどうにかなりますが、子どもたちの世代はそうはいかないでしょう。成功か失敗かは別にして、お父さんお母さんは、この時代にこういう挑戦をしたんだよって胸を張って語れることが理想です。挑戦するなら、フルスイングできる会社にしたいと思っています。
現時点で、事業面で早急に解決するべき課題は何かありますか。
それは、ファーストペンギンを探すことです。われわれの技術は、完成し社会実装されれば、すごく大きな価値を生み出すものですが、まだ技術が完成しきっていない段階です。ここで、あえてリスクを取って誰よりも早く投資の決定をすることが、日本の企業では難しい。幸い、いま話は進んでいますが、数年先に最後のディシジョンがどうなされるのかは、心配があります。これを導入する顧客や、投資家が、われわれと同じ気持ちでファーストペンギンになってくれることが、これからクリアすべき課題です。
多くのスタートアップで、「なぜ我々パートナー企業だけが、これを開発しなければいけないのか」問題は起きています。これは日本でも世界でも共通の話です。米国発のSBIR制度(Small/Startup Business Innovation Research)は、ミリオンドル単位で資金がついていて、それに政府調達の枠もつくという制度なのですが、日本版も始まりました。事業会社とスタートアップが一緒になって実証実験を行い、企業からの持ち出しはない仕組みでやるということです。ただ、これでも大企業は腰を上げないことはあります。われわれは、スタートアップへ投資するとき、最後には大きな事業会社へ引き継がなければなりません。それをいかにスムーズに行うかということを、行政の考えも含めて、話合っていくことが重要です。そういう観点では、ライノフラックスも含め、われわれが支援しているスタートアップは、冒険的な要素が多いのですが、彼らのモチベーションはどこから来るのだと思いますか?
スタートアップの世界にも、Saasに代表されるような確実性の高い王道ができつつありますが、そこには、もうホームランの種がなくなっています。しかし、ディープテックの世界には、まだまだ未知の要素がたくさんあり、そこに眠っている可能性に、おもしろさやワクワク感を持っているのかもしれません。
弊社であれば、メンバーとよく話すのですが、われわれの磨いている技術は熱力学的に考えれば絶対にそうあるべきプロセスなのです。地球に大量に存在する植物を、エネルギーの墓場と言われる熱にすることなく、より質の高い電気に変えるにはどうすればいいのかを突き詰めていくと、熱に変えずに電気に変えていくというのが正解なのです。ただ、これをいまの技術やノウハウで、タイムリーに社会実装できるかどうかが、われわれのチャレンジになっています。そういう意味で、5年後、10年後に見える結果というのは、あくまでも断面であって、もっと長いスケールで見た時にどうなのかという視点で仕事をしようと考えています。将来、自分の娘に、私が30代でこういう挑戦をして、こういう時間を過ごしたということを伝えたいですね。結果がどうなっても後悔はありません。私が京都に来て、京都でスタートアップを起業したことの醍醐味がそこにあると思います。
今日は素敵なお話をありがとうございました。事業として利益を出すということは非常に重要ですし、ベーシックエレメントではあるのですが、そこにある夢とか、フィロソフィーとかもとても大切です。改めて京都iCAPを、それが共有できる場にしていきたいという思いを強くしました。
このインタビューは、NEDO「大学発スタートアップにおける経営人材確保支援事業(MPM)」にて実施しました。
(2024年11月実施。所属、役職名等は取材当時のものです)
EIR-iCAP一期生として京都大学発スタートアップを立ち上げられた間澤さん。起業家の鏡のようなインタビュー記事ですが、EIR活動期間中はハードシングスの連続で顔色の悪い日も沢山ありました(笑)時には社内のキャピタリストと対峙し、時には先生と重苦しい話をぶつけ合い、苦難の果てにできたライノフラックスという作品の未来を、京都iCAP一同心から応援しています!
京都iCAPでは間澤さんのような挑戦者を随時募集していますので、お気軽にお問い合わせください!
菅野 流飛
ライノフラックス株式会社 ウェブサイト
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